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愛蜜花 〜優しいSとMの関係〜
第1章 1
ーー昨日。

仕事を終えた携帯に連絡が入った。
幸介からだ。

[明日、葵のところ行けそうなんだけど、葵の都合はどうかな?
多分18時くらいになると思うんだけど。]

少し視線を上げて考えると、すぐに返信をした。
[明日は大丈夫。
連絡待ってるね。]

簡潔に返信をすると、鞄に携帯を入れて帰宅の準備を始める。
パタリとロッカーを閉める。

『さて、帰ろ。』

小さく呟いて、肩に鞄をかけた。

幸介とは、大人の関係だ。
若い頃みたいに、キャピキャピとメールでの連絡を長々と取り合う訳でもなく。
連絡事項、伝達事項を伝えれば、それ以上のやり取りは必要ない。

自分よりも10歳近く年上の幸介は、仕事の役職で言えばかなり上の人だし、多忙である上、たまに時間ができるとこうして連絡をくれる。

多い時で週1回。
少なくとも2週間に1回は、連絡が来る。

そんな間柄だった。
関係は…
正直良く分からない。
付き合ってると言う程、お互いの存在に依存してるわけではないし、だからと言ってお互い他に特定の相手が居る訳でもない。
ただ、男女の気楽な関係とでも言うか。
深く考えるのも、なんだか面倒だし、これはこれで上手く行ってる気がするから、それでいいかなーと。

そんなことを思いながら、帰宅して再度携帯を見ると、幸介から返信が来ていた。
[明日はスカートで、僕がすぐ触れるようにして来るようにね。
18時に、いつもの場所で。]

…トクン。
少しだけ胸が高鳴る。

幸介の命令は決して威圧的でなく、あくまで優しく、それでいて胸を踊らせる。
[分かりました。
では、また明日。]
自分なりに、幸介の言う命令の意味を考える。

少しだけ高揚した頬。

けれども、あくまでそれを自覚しないように、自然体で携帯を置いた。



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