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拓也と菜津美
第1章 不安(拓也)
この時間の電車に乗るようになって二週間あまり、今まで彼女に会えない日は無かった。
しかし、今日はいない。

(ほら、電車が来ちゃった…どうしよう…)
(今日はお休みかな?一本早い電車に乗ったのかな?まさか…仕事辞めちゃったなんて事はないだろな…)

焦りながら、なお、彼女の姿を探していると…電車のドアが冷淡な音をたてて閉まった。
拓也はどうしたらいいのか解らず、ホームの隅にたたずんでいた。

(やっぱり、会社を辞めてしまったんだ…)
(誰かにブロポーズされ、結婚しちゃったんだ…)

根拠のない推測は、もはや確信に変わっていた。
この歳の少年にありがちな極端な思い込みで、毎日のささやかな楽しみを失った拓也には、生きる意味さえ無くしたように感じられた。

そんな拓也だったから、改札口からの階段を降りてくる、白いワンピースを着た彼女を目にしたとき…
おおげさでなくホームに天使が舞い降りた…と思ったのだった!
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