この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
とある家族の裏事情
第3章 番外編 〜とある老夫婦の話し〜
小百合が病院へ出勤すると
ナースステーションが何だか騒がしい
小百合は同僚の看護師に
「どうしたの?
なんか今日、騒がしいね」
と、尋ねると
「若宮先生が
院長の娘さんと婚約したんだって!!
院長も病院を任せるなら彼しか居ない!
って大喜びらしいよ〜」
目の前が、ぐにゃぁと歪んだ気がした
自分の体を、こんなにしておいて……
彼は彼で自分の生活を、きちんと
続けていたというのか……
具合が悪いから、休んでくると
同僚に伝えて屋上へ行く
屋上に置かれた年季の入った
青いベンチに腰掛けて
何回か深呼吸をする
彼を責める事は出来ない…
そもそも私は既婚者だし
最初は嫌々だったとしても
すぐに自分から求めるようになって
楽しんでいた………
彼に恋愛感情は無いと思ってたけど…
だけれど2年以上も体を重ねてきたからか
何とも言えない感情が込み上げて、
心臓をぎゅううぅと締め付けてくる
小さな声でポソっと
「潮時だったのかな……」
と、呟いて上を向く
そこには、雲一つない青空が広がっていた
「それじゃぁ、また明後日!!
太一くん、お野菜も食べてね〜」
と、言い残して
通いの、お手伝いさんが帰っていった
最近、母親が家事をするようになったので
通いのお手伝いさんが来る回数が減った
小学生になると母親は仕事のために
家を空けるようになり、
通いのお手伝いさんが毎日来た
自分の体は、彼女の食事で
大きくなったと言っても過言ではない
眼鏡を掛けたぽっちゃり体型の彼女は、
太一の体を心配して様々な
工夫を凝らした料理を用意してくれた
感謝してもしきれない
彼女がダイニングテーブルで
餃子の具を皮に包み
太一は彼女に向き合って座り
勉強をする
「最近さぁ…
母親が話しかけてきてさぁ…
今更なんだよって感じ」
「あらやだぁ〜
思春期ねぇ!!うふふ!!」
「いやいや、普通にウザいだけだから」
彼女は手際よく餃子を作り上げていく
「今はね、うざったくても良いの…
でもね、もう少し大きくなれば
お腹を痛めて産んでくれた事を
感謝する日が来るから…」