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ママ活
第1章 社長が昔のママだった──case1.明咲──
* * * * * *
あくる日、明咲はラブホテルの個室で朝を迎えた。
昨夜は鮮やかな照明が特殊なムードを強めていた空間は、目が慣れれば、少し変わったホテルに見えなくもない。もとより宮田が店に戻る前、照明を通常モードに切り替えていったのが大きい。一人になった客室で、明咲は彼のカードで夕餉を食べて、湯船で身体を清め直して、自宅にいるより寝心地の良い寝台で眠った。
一日洗っていない制服に袖を通して身支度を終えたところで、宮田が部屋を訪ねてきた。
そして、もう一人、彼の側に女がいた。
いや、体つきを見るに、女にしては屈強だ。すぐに男と分かったが、儚げで、絵から抜け出てきたように愛らしい。
「彼は、満徳抄(まんとくしょう)。昨晩話した、オレの恋人だ。彼が君を男にする」
「えっと、……バレると思います」
今一度、明咲は宮田の個人的な仕事依頼を、頭の中で整理した。
早い話が、彼が明咲に提案したのは、ママ活だ。デートクラブで働く代わりに、ある一人の女の相手を務めないかと持ちかけてきた。
古賀佐和子(こがさわこ)。
彼女は、宮田に多大な損害を与えたという。当然、彼は友人でありビジネスの関係者でもある彼女に、恨みを募らせている。そこで思いついたのが、復讐だ。
佐和子は愛らしい少年を好んでいて、彼も抄を愛人として迎えた以前は、男の娘専門風俗店や、あどけない顔立ちの男ばかりを集めた飲み屋に、彼女と共に出入りしていた。従って、彼はターゲットの好みを把握している。彼曰く、明咲が男の格好をすれば、間違いなく理想に適うらしかった。
ともすればひと回り以上も歳下の男を愛する佐和子が、男装した明咲を女と気付かず、のめり込んで金を溶かす。その姿を眺めて愉快な思いが味わえるなら、例の負債は肩代わりしよう。彼は、そうした条件まで出してきた。