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ママ活
第4章 愛しのお姉様と姫とママ

 緑茶に息を吹きかけて、向かい側で湯呑みを傾ける佐和子の動作に続きながら、明咲は彼女をちらと見る。

 佐和子は、四年前より綺麗だ。あの頃も明咲の視覚は彼女に飽きたことはなかったが、一昨年より昨年、昨年より今年、今日より明日──…女は、歳月を重ねるほど垢抜けるのか。


「明(あき)くんと、旅行してみたかった」

「初耳です」

「拘束時間は一日以内、それが契約だったから」


 その通りだ。

 当時、佐和子とは、二十四時間以上を共に過ごしたことがない。借金は早くなくしたかった反面、学業は疎かにしたくなかったからだ。

 取り決めを守ってくれていた彼女は、今にして思えば律儀だった。


「誘ってもらっていたら、乗っていたかも。女性と外泊って、楽しいです」

「ふぅん、小川さんと仲良くなったのね」

「そうじゃなくても、あの契約はぼったくりみたいなものでした。もっとわがまま言っていただいて、良かったんですよ」

「じゃあ、今、言おうかな」


 佐和子が、明咲の真横に場所を移した。腕を伸ばして、彼女がボストンバッグを引きずり寄せる。

 出てきたのは、彼女の好みとはかけ離れたシャツや上着、カジュアルな仕立てのボトムなどだ。深い寒色が多くを占めるそれらは小柄なメンズ服にも見えて、価格帯の低い店に並びがちなデザイン、素材だ。明咲は、こうしたものをさらりと着こなす人物と、どこかで面識を持っていた。
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