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ママ活
第4章 愛しのお姉様と姫とママ
ゴールデンウィークに入る前、亜純と例のDVDを模倣した時は、三時間にも到達しないで眠りに落ちた。
佐和子達とは、あのひとときを上回ったのか。亜純ほど欲しいものを与えてくれる、セックスの相手として申し分ない女など、明咲にはいないのに。
泊まっていけば良いという稲脇の提案を辞退して、明咲は佳歩のいる部屋に戻った。スマートフォンの明かりをつけると、消灯した客室から、軽快な音楽が聞こえてきた。
「小川ちゃん?」
「あっ、明咲ちゃん。お帰り」
彼女の手元の画面の明かりが、白い肌をより強調していた。よく動く表情を華やがせるくっきりとした垂れ目に引き立つ黒目がちな目が、明咲に笑いかけながら、どこか疲れた色を覗かせている。
「電気消してゲームしてたの?目、負担じゃない?」
「好きな時に寝落ちれるからー。遅かったね、社長、そんなに退屈がってたの?」
「うん、まぁ……ごめんね。先に寝ていてくれたら良かったのに」
「眠れないよ。今夜中にクリアして、サポートキャラを育成しないと」
すこぶる普段通りの友人に、安堵した。
暗がりで良かったのかも知れない。無邪気で素顔な佳歩の視界がはっきりしていれば、何が浮き彫りになっていたか分からない。彼女の好意を持て余しながら、明咲にとって、他意なく優しい彼女の想いは安らぎに近い。彼女を落胆させたくない。
自立している、キラキラしている、恋愛的に好きだった。…………
彼女の言葉の数々は、きっと明咲に相応しくない。それでも今は、彼女の目に触れているままの自分を見せていたい。
「小川ちゃん、……ごめん」
「えぇっ、良いってば。見かけによらずブラック企業だったんだねー。明咲ちゃん、休日出勤手当て、請求した方が良いよ!」
佳歩が慌てて両手を振った。
おそらく彼女が受け取ったのとは別の根拠で、明咲に出来るのは謝罪だけだ。
亜純に焦がれて、佳歩に救われている。明咲には、彼女らが羨ましくもある。清らかで、自由だ。
明咲には、きっと、そんな彼女らをただ大切に想うだけが、唯一許された自由だろう。
第4章 愛しのお姉様と姫とママ──完──