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ママ活
第1章 社長が昔のママだった──case1.明咲──
それから一週間、明咲は抄の猛特訓で、彼が風俗時代に身につけたという仕草や口調を習得した。そして、佐和子が好みやすいという服装を覚えた。衣装は彼の古着を始め、宮田が新調してきたのもあった。
世の中には、男というものにつきまとう固定概念を覆すタイプの男達が、一定数いる。明咲の母親は、たくましく精悍な男を好んだが、宮田達に連れられて、明咲もそうした類の飲み屋を視察して、彼らの佐和子を騙すことへの自信も腑に落ちた。彼らの行きつけで働いていた青年達は、少なくとも明咲より、あざとくか弱くなよらかだ。
明咲は、黒髪をショートまで切った。その上、ユニセックスやメンズ服を着て、地声よりややトーンを落とした言葉つきを定着させると、妙に自己肯定感が上がった。学校で女子達に頬を染められる度に傷付いていたくせに、いざ男装して鏡を覗くと、惚れ惚れした。抄が怒って阻止してくれていなければ、明咲は、本当にセックスしておかないかと口説いてきた宮田に、貞操を摘まれていたかも知れない。
この一週間、明咲はホテルに寝泊まりした。宮田の仲介で古賀佐和子と顔合わせして、計画通り明咲が彼女と愛人契約したその日、彼は約束の負債額の八割を、綺美果の名前で金融会社に送付した。すぐに彼女から連絡があった。厳密には、明咲が家を出ていた一週間にも、連絡はあった。どのくらい稼げているか、もう処女は売り払ったか。彼女が知りたがったのは、そうした点ばかりだ。