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ママ活
第1章 社長が昔のママだった──case1.明咲──
負債が二割に減ったと知るや、母親は明咲の帰宅を許した。
明咲は学生生活を再開して、授業と、佐和子との逢瀬を往復して日々を送った。
佐和子は謎めいていた。三十代後半の彼女は、金で男を買う必要性がどこにあるのか、明咲には理解し難い。いっそ彼女に貢ぎたがる人間の方があとを絶えないのではないかというほど、容姿や人間性に優れていた。美しく、可憐でもある。明瞭に話す声は凛としていながら耳触りが良く、毛先をすいた黒髪は、すみずみまでつややかだ。
破格の足代、手当て、小遣いという名目で彼女から渡された金銭は、一年半で、綺美果に借金を完済させた。
十七歳の秋に出逢った佐和子に、およそ一年半、明咲は誠心誠意尽くした。
本名は、彼女に教えなかった。明(あき)と名乗っていた明咲を、佐和子はありのままの彼女として愛でて、入れ込んで、おそらく信頼も寄せていた。
ママ活だのパパ活だのは、外でのデートが相場である。しかし宮田の危惧した通り、契約して次の季節に移らない内に、佐和子は肉体関係を望んだ。幸い、明咲にあざとい男に扮するための極意を叩き込んだ抄は、かつて風俗店に勤務していた。従順に見せかけて主導権を握るための話術から、極力、相手に身体を触らせないで行為を済ませる方法まで、明咲は彼から教わっていた。しかも彼は、かつて佐和子と寝たこともある。