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ママ活
第5章 社畜と推し活とママ活
* * * * * *
午後、各々が業務を再開した。
例のごとく顔を見るのも食傷する上司から、亜純は指示を受けていた。一通りの説明のあと、懸念点を確認すると、あからさまに不機嫌な顔が彼に浮かんだ。
「お前は、この仕事をして二年だろう。毎度同じ説明を十までさせるな、この案件に資料はいらない、何度言えば分かる?」
「以前、部長に言われた通り先方に提出したところ、書類を省くとあちらで手間がかかると仰いました」
「ウェブで確認してもらえ」
「更新されていないページがあります。例えば、ここ。税率が違う、と頻繁に問い合わせが来るそうですが」
「直せば問題ないだろう!お前も何故、担当に更新を指示しない?!」
ウェブ担当者らは、別の企画でそれどころではない。指示ならとっくに出しているし、彼女らにしても、上の許可が下りなければ動けない。内容もいくつか見直しが検討されている中で、些細な誤差は先送りになっていると聞く。
「お前、言い方がまずかったんじゃないか?どうせ急ぎだと説明していないんだろう」
「では、内線を繋ぎますので部長が話していただけますか」
「これだから顔採用は使えねぇ!!」
部署内の空気が凍った。
もとよりここにいる顔触れは、彼のような古株と、護身に徹する中堅、何かあれば彼らの火の粉を被らないようおとなしくなる若手ばかりだ。社会を甘く見ているだのスキルもないなら結婚しろだの、上司は亜純をどやしつけると、乱暴に書類を押しつけて、自身の定位置へ戻った。