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ママ活
第5章 社畜と推し活とママ活
オフィスの空気がやわらいだのは、夕方、上司が退勤したあとだ。肩の荷が降りたような顔で業務を続ける残業組に、中堅達は無理をするなと声をかけながら、我先にと帰宅した。
亜純が得意先に連絡をつけて、経理に明るいAIソフトを所有している社内の人間とやりとりして、上司の支持を遂行したのは、終電十数分前だ。りなが夕飯から戻ってきて、差し入れと手伝いをしてくれたお陰で、亜純も一旦小腹を満たすと、彼女の助けで仕事が捗ったのだ。
明咲達には、昼間の誘いを撤回していた。彼女らは労いのコメントを付けながら、上司の横暴ぶりに驚いてもいた。佐和子の経営方針はよく知らないが、少なくとも社員達には陽が落ちきるまでには帰路に着かせているだろう。
「お疲れ様です、皆さん。……部長、荒れてましたねぇ。林さん大丈夫ですか?」
「有り難うございます、伊本さん。ごめんんさい、つい泣いちゃって……気が散りましたよね?」
「いえいえ、お陰で私は部長の目を逃れられて、皆さんのお手伝いが出来ました。結果良ければ、ってやつです」
「伊本さんは、峰積さんをお手伝いするためなら、残業もお嫌いじゃないですもんね!」
「あ、そっかぁ。私達、お邪魔でした。馬に蹴られる前に帰りまーす」
「ふふ、お疲れ様です。本当に助かりました」