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ママ活
第5章 社畜と推し活とママ活

* * * * * *

 亜純から誘いがあってから、一時間と経たない内に、彼女の都合がつかなくなった。

 予定が反故になってから、明咲はどうしようもない消化不良を引きずりながら業務に戻って、定時を迎えた。


 佐和子に与えられている部屋は、会社の目と鼻の先に位置する。俗に言う高級マンションで、住み心地も警備面も、文句のつけどころがないからだろう。ということを明咲が知ったのは、数日前、少し立ち寄った佳歩が、同僚の起臥している場所をそう評価していたからだ。


 自分は、佐和子の何か。

 都合の良いペットでさえないのだろうと、ふと、部屋に一人で帰り着いた時、身に染みる。
 ペットでも意思が尊重される。それなら明咲は、佐和子のただの所有物だ。彼女がいなければ未だ母親と気まずく暮らしていたかも知れないし、或いは生きてもいなかった。かつての一件があったあとも、母親は懲りずに男と愛だの恋だの語らっているが、もしあの時、宮田の出来心が明咲を救っていなければ、今も母娘は借金にまみれたままだった。生きていたかも分からない。

 だからこそ、明咲が自分の意思で一緒にいると感じられるのは、亜純だけだ。
 彼女とは、利害関係がない。初めて、ありのままの姿と心で身体を委ねた。彼女には負い目もない。ともに過ごしている時だけは、明咲は自由でありきたりな一個人になれる。
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