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ママ活
第5章 社畜と推し活とママ活
たまらなく亜純に会いたかった。
ゴールデンウィークの旅先で、自身が佐和子の所有物と思い知らされて以来、亜純とは予定の合わない日が続いている。今日こそ会えると思っていたのに、顔も知らない彼女の上司の妨害に遭った。
とは言え、亜純に非はない。会えないものは仕方ない。
昼間からほんのり疼いている腰の奥には意識を向けないようにしながら、明咲はドアに鍵を挿した。
その時──…。
「明咲」
誰かの自分を呼ぶ声が聞こえた。
亜純の声の幻聴などという、ロマンチックなものではない。本来の部屋の持ち主である佐和子でもなく、ここを知る佳歩とも違う声に顔を向けると、妖艶さと愛らしさを備えた女がそこにいた。
ふた回りほど年長ながら、きっと心は、明咲以上に少女めいているだろう彼女──…母親が、まるで今朝も仲良く話していたばかりのように気さくな顔で、娘に片手を振った。
そして彼女、綺美果は、善良で熱心な母親らしい常套句を並べ始めた。
会いたかった、連休にも連絡を寄越さないなんて薄情だ、元気に暮らしているのか、何か困ったことはないか。…………
綺美果の問いの一つ一つに、明咲は答えた。元々、母娘関係は険悪とまではいかなかった。結果的に明咲が彼女のために擲ったのはファーストキスくらいだったし、佐和子のお陰で破瓜も売らずに済んだのだから、いつまでも六年前のことを引きずっている理由もないのかも知れない。