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ママ活
第5章 社畜と推し活とママ活
何の問題もない。同じ出身校の同期や恩人との再会もあって、新生活は充実している。…………
絵に描いたような回答を織り交ぜながら、明咲は母親との会話を続ける。そして、彼女も近頃の恋愛話を披露した。
「彼は私に、人を愛する幸福を思い出させてくれた。ああ、明咲にも感謝しているわ。私を助けてくれた自慢の娘、母親面で心配なんて差し出がましいけれど、恋はした方が良いよ」
「お母さんが幸せそうで、安心したよ。私は、まだ仕事を覚えるのに一杯だから……」
「古賀グループだっけ?こんな待遇なら、女でもやる気になれるわね。新卒でここまでの部屋に住めるなんて、幹部ならどれだけなのかしら」
綺美果の目にも、ここは上級と映るらしい。
明咲の肩越しに扉を覗いたり、天井と床が互いを映すほどにはつやつやとした広い回廊を見回したり、ともすれば彼女は娘の部屋を品定めしている様子だ。
もっとも、明咲が古賀グループの所有している物件に居を構えている旨を彼女が調査済みなのは、娘の捜索に際して佐和子に紐づくものを調べ回った成果だ。
「ところで、明咲。彼は私との将来のために、会社を立ち上げるんだって。今の社長とは、私も会ったことがある。その時のディナーは、それはもう恐縮するくらい贅沢だったわ。もちろん勤務先だから、前のように架空じゃなくて、知る人ぞ知る◯◯社。社長は独立に協力して下さることにもなっていて、聞いてよ。ボロアパートに住んでいる私が、社長夫人になれそうなの」
「おめでとう。お母さんなら、真剣に愛してくれる人に出逢えるって信じてたよ」
「ただ、色々と入り用でね。株式でも融資は受けなければいけないの。昔あんな目に遭ったから、出来れば、私はそういうことはしたくなくて……」
母娘で金を工面しないか。
そう切り出して、綺美果は必要な額を明示した。