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ママ活
第5章 社畜と推し活とママ活
「もう佐和子さんには、迷惑かけたくない」
「おねだりが迷惑なら、愛人の文化なんてとっくに頽廃しているわ」
ついには綺美果は、明咲に世辞も向けなくなった。仕方なく産んで育ててやった恩を仇で返すのかだの、人でなしの実父とそっくりだの、夜間のマンションには不適切な金切り声が反響し合う。
「女が相手なら楽なものでしょう?!私みたいに種を植えつけられもしない、誤って身ごもりもしないんだから!!」
明咲の腕を掴んだ綺美果が、悲痛な剣幕で声を荒げる。
「やっと失恋から立ち直れたのに、またお母さんを苦しめるの?!どうせ誰も愛せないなら、金くらい搾り取りなさいよ!!」
「お、母さ……ん、痛い!ぅっ……く」
これ以上、綺美果が興奮すれば、近隣住民から苦情が出る。……
彼女の指が食い込む腕より、後処理を思って気が滅入りそうになった明咲の視界の端に、恐れていたものが触れた。第三者の影である。
もっとも、夜間の母娘喧嘩に居合わせた第三者は、ここの入居者ではなかった。