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ママ活
第5章 社畜と推し活とママ活


「こんばんは、明咲」


 凛然と優雅な足どりで近づいてきたその人物は、明咲達のすぐ側に足を止めた。花でも背負って見えるようだ──…佐和子は、突然の訪問者にも微笑んだ。


「亜純がドタキャンして、明咲が欲求不満になっているかと思ったの。そうしたら何、この修羅場。……お母様?」


 明咲は頷く。

 すると佐和子は、稀少な生き物でも観察する目を綺美果に向けた。


「ふぅん。このご婦人が、男運のない、恋愛体質なお母様なのね。初めまして。古賀佐和子です。娘さんには公私共にお世話になっています」


 やはりやんごとない生まれ育ちを暗に示す表情を張りつけて、佐和子は、綺美果の力がゆるんだ隙に明咲を奪って、腕を絡めつけてきた。

 佐和子とは終わりにしたかった。明咲を人間とも思っていないのだろう彼女には、心まで明け渡したくない。

 そうした感情で彼女とは関わってきたのに、明咲は彼女の登場に安堵している。

 佐和子と綺美果がわざとらしげな社交辞令に塗り固めた挨拶を交わしたあと、明咲の「ママ」を自称している道楽者は、初対面で同世代の女にこう付け足した。


「明咲のお母様って、私に優って偽善者ですね。気が合いそう」

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