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ママ活
第6章 自分を幸せに出来るのはママ?それとも……
「シンプルな方が、誤魔化しにくい。食堂なら、焼き魚定食こそ判断材料が揃っているわ」
「そう言えばお母さん、白米の炊き加減だけは最高だったな」
「自炊出来る人だったの?今、人物像ぶれたかも」
行列も半分ほど進んだところで、つと、明咲は実家にいた時分を思い出した。
定食のトレイを運んでいった二人組の会話が、綺実果を連想させたのだ。すれ違った彼女らも、食堂の白米が美味しくなったと話していた。…………
「いらっしゃいませ、お疲れ様です!福田さん、ちくわの磯辺げ、おまけしておきます。内緒ですよぉ?」
「覚えていて下さったんですか、僕が磯辺揚げ好きなこと……」
「お姉さん、味噌汁、大盛りお願いします。お姉さんが仕込んだんでしょ?奥さんに教えてやって欲しいな。この味噌汁、最高です」
「森口さん、ダメですよ。そんなこと言ったら奥さんが可哀想です。でも、レシピは渡しておきますね」
「お姉さん、私にもレシピ下さい。差し支えなければ、この前の豆腐ハンバーグ」
両者の会話が聞き取れるほど、カウンターが近づいてきた。噂の従業員の人気ぶりは、確かに評判通りのようだ。話題の中心人物は、早くも常連を獲得していて、顔と名前まで覚えている。
「二名様、焼き魚定食ですね、お待たせしまし──…」
明咲を見るなり、カウンターにいた三角巾を被った女が言葉を失くした。数秒遅れて、明咲もおそらく彼女と同じ表情になった。
「お母、さ、……」
「あら、明、咲……」
「えっっ!!?」
声を荒げたのは佳歩だ。はたとした様子で俯いたところからして、彼女自身、そこまでの声を出すつもりはなかったのだろう。