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ママ活
第6章 自分を幸せに出来るのはママ?それとも……
僅か数日で社員らの注目を集めた食堂従業員は、綺美果だった。
長い栗毛は大部分を三角巾の中に収めて、少女時代の名残りの覗く顔を引き立てていた化粧は一変して最低限、爪は短く、当然、機能性と清潔感のみに特化した作業着姿。
声だけでは明咲が彼女と気付けなかったのは、それまで恋をしている母親の姿ばかりを見てきたからだ。飲み屋に勤務していた彼女は、娘に職場を見せたこともない。
「予想以上の働きぶりで、驚いています。新藤さん」
にわかに再三者の声が差し入ってきた。
これだけの賑わいでも、明咲には分かる。はっきりとした輪郭を持つ声は、さしずめペパーミントのように爽やかな風を連れて現れた佐和子以外に、見当つかない。
今朝まで自堕落的と言えるくらいには、羞恥もなくじゃれ合っていた女の登場に、明咲は場違いな整理的現象をきたしかける。だが佳歩や、今も尚、新藤綺実果という従業員に好感を向ける社員達の存在が、明咲の気分を引き締めた。
明咲は、どこか見覚えのある献立の並んだトレイを運んで、佳歩達とテーブルに移った。
佐和子は綺美果の様子を見に訪ったらしい。聞けば、彼女をスカウトしたのは彼女自身で、実績次第で、彼女と同世代の社員達に引けをとらない待遇も約束したという。