この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ママ活
第1章 社長が昔のママだった──case1.明咲──
佐和子とのママ活をやめて、四年が経つ。
二ヶ月前、大学を卒業した明咲は、春からイベント運営会社に勤務している。今年は出身校が同じの同期が一人いて、彼女は部署まで同じだ。
母親との関係は、借金を完済した四年前、冷めきった。悪辣な雰囲気ではないにしても、時折、彼女はどこか明咲に引け目を感じたようなぎこちなさを見せて、明咲の方も、十七歳の秋に売春を強要して暴力まで振るった彼女の顔が、頭から離れないでいた。ここ数年の内は、急に帰宅が億劫になったこともある。佐和子と別れて以後、服装だけでなく交友関係にも自由が出来た解放感から、マッチングアプリで女と知り合って、彼女の家に転がり込んで、夜通し抱かれることも日常化した。
一度身体を売った女は、無償のセックスが面倒になることがあるという。
明咲は、おそらく例外だ。四年近く続いているセフレがいるし、彼女となら感情を挟んだところを想像しても、嫌な気がしない。それでもこの先、自分がどんな相手を好きになるか、まして結婚願望とやらを持つのかも、今は考えようという気になれない。ここまで男との縁はなく、彼らとのセックス願望は湧かないところから、母親のようにシングルマザーになる可能性は極めて低いが、自分の将来が全く見えない。
ただ、平坦な日々が続いていた。平坦とは言っても、新入社員が覚えることは山積みで、退屈とは呼び難い。
例の同期と業務の合間に世間話するのを楽しみに、新生活を送っていた明咲は、四月も一週目が過ぎかけていたある夕方、代表取締役から呼び出しを受けた。