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ママ活
第6章 自分を幸せに出来るのはママ?それとも……
彼の目先で食卓を囲う二人の大人と一人の少女は、笑顔だ。何かの撮影か、或いは作り物かと勘繰るくらい見栄えが良く、あの一家は皆、生まれる前、生きる場所を選ばせてもらったのではないかとまで想像する。
宮田は昔話を続けた。
彼の経営しているデートクラブには、金銭的に追いつめられて、稼ぐ手段を選んでいられない類の女もいる。当時の明咲は後者だった。若さの割りに、彼女の事情はあまりに理不尽だった。
「オレは、佐和子を見込んでいたんだ。悪いようにはしないと、な。五年がかりでこんなプレイを思いつくとは思わなかったが」
善人か悪人か見分けのつかない顔を崩して、宮田がグラスを持ち上げた。
佐和子の何を知っていて、何を根拠に、宮田はこの悪友を信頼したのか。
当時の明咲は美しかった。
抄得意の口説き文句や仕草を仕込まれた面に興味はなかったが、そうしてまで母親の搾取を受け入れていた彼女は脆く、まるで踏まれるまま素直に汚れる積もりたての雪だった。
微睡んでいれば本当に男と聞き違えるほど落とした声は、じわりと佐和子の脚と脚の間を濡らして、恋人を見つめていたような目は、初恋も知らない深い孤独を湛えていた。ガラス細工に触れてでもいるようだった指は、恋を知らなくても女体を理解していなければ、あれだけ思いやりで満たせなかっただろう。
彼女ほどの容姿の女であれば、佐和子の身辺にはいくらでもいた。だが、彼女の代わりはきっとどこにもいなかった。