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ママ活
第6章 自分を幸せに出来るのはママ?それとも……
明咲は、残りの帰路を佐和子と歩いた。
浴室やシーツも整えないで出てきて、情事の名残りが随所に染みたままの部屋は、彼女からどんな感情を引きずり出すか。再会した週末のように、愛玩動物を躾けるつもりにでもなって、彼女は明咲に土下座くらいさせるだろうか。
相応の覚悟で佐和子をリビングに通して、風呂を沸かすか問うと、彼女は甘いものを所望した。
明咲は、水出し紅茶を注ぐための氷をグラスに準備して、パウンドケーキをくるんでいたラップを剥がした。天辺にスライスした洋梨の並んだそれを切り分けていると、キッチンに顔を出してきた佐和子がお茶の準備を引き継いだ。
「有り難うございます」
「ううん。明咲も疲れてるんじゃないかな、って。小川さん、あからさまに貴女を狙っているでしょ」
「そんな肉食系じゃありません。それに可愛いです」
「満更でもないんだ?邪魔しなくて良かった」
「え……」
「こっちの話」
まるでどこかで明咲達を見ていた風な言い方だ。
もっとも佐和子は、今日、宮田と会っていた。
リビングに運んだティーセットの前に座って、明咲と佐和子は手を合わせた。
昼間はクレープ、夜はパウンドケーキとくれば、舌が塩気を求める気がしたのも杞憂に終わって、食堂従業員からの差し入れは、売れ残って一日経ったとは信じ難いほど明咲の味覚を感動させた。シンプルで、それでいて素材選びから丁寧に調理されたのが分かる、有名店でもなかなか見ない手作りの味は、懐かしくもある。