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ママ活
第1章 社長が昔のママだった──case1.明咲──
「さわ、……」
「来てくれたのね、新藤さん」
やはり佐和子だ。
鈴を鳴らすように澄んだ声、それでいて聴き手を海の底に誘うような響きを含んだそれは、何度、明咲の耳に舌を這わせるようにいかがわしい感覚を呼んで、腰の奥まで疼かせたことか。
化粧や髪を変えたからか、四年前より垢抜けている。
佐和子は、親しい旧友に再会でもした笑顔で明咲に距離を詰めた。そして、旧友に対するにしては人懐こく、彼女は明咲の両手をとった。
「明(あき)……いいえ、本名は、明咲。貴女との日々は楽しかったわ。貴女が私に隠していたこと、あの頃とっくに見抜いていた。宮田の差し金だということも。彼、私がバイセクシャルだと知らなかったのよね」
それから、佐和子は続けた。
あの頃の関係に戻りたい、今度は女と女として。
彼女は、明咲と契約を切ったあと、再会に向けて動くことを思いついた。どうあっても明咲が彼女の会社を志望して、他の企業は全て採用が見送られるよう、大学や各業界に根回ししたのだ。就職試験や面接で、明咲が彼女に気付かなかったのは、ここ二年は、代理の親族が代表取締役を務めていたからだという。そこまで彼女の計略だったかは定かではないが、その間、彼女は古賀グループの別の仕事を任されていた。