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ママ活
第2章 令和の女子高生のママ活事情──case.2ゆう──
ゆうは、姉のアドバイスに従った。マッチングアプリは彼女の協力なくして使えなかったし、万が一厄介ごとにもなれば、彼女にも迷惑をかけるかも知れない。両親の小言はゆうの自由を奪うだけだが、姉の助言には厚意がある。
三日後、ゆうは古賀佐和子という女に出逢った。マッチングアプリを初めて利用したという彼女は、道徳の範囲内であればいかなるニーズにも応じると書いたゆうの募集分に、魅力を感じたらしかった。
ゆうが驚いたのは、これだけ異性間での出逢いを推奨しているアプリを通して、女とママ活の縁を持てたことではない。そうした募集に乗ってきて、とんとん拍子でデートの約束を取りつけて、本当に待ち合わせ場所に現れた佐和子が、目を瞠るほど美しかったところにある。
佐和子は容姿に優れていた。女に定着した固定概念に準じた美しさはもちろん、現代的な格好良さもあって、時折垣間見せる表情は、少女のように可憐である。饒舌な彼女はさり気ない気遣いに長けて、ゆうを退屈させないようよく努め、聞き手に徹するのも上手い反面、会話を続かせる術も心得ている。オードトワレを振りかけているのだろうが、それが彼女の体臭にでもなっている具合に、嫌味なく香る。素肌のきめこまやかさを活かした化粧、よく手入れされたシャギーの黒髪──…特筆すべき特徴がないのにも関わらず、一度会えば、彼女の印象は強烈に残る。