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ママ活
第3章 快楽かお手当かママか──case.3亜純──

* * * * * *
男に、亜純はろくな目に遭わされてこなかった。
大学生時分は、アルバイトしていた某チェーン店に、仲の良い後輩がいた。一歳下の彼女はよく懐いてきて、口を開けば亜純をおだててばかりいた。亜純も満更ではなくなって、彼女の気性に惹かれていった。
彼女が好きだった。休みが被った日や誕生日も、共に過ごした。
ところがある時、新参の従業員が彼女に恋心を告げて、交際を始めた。以来、亜純が彼女と出かける機会は半減以下になり、誕生日などメールで済ませる程度に落ちた。
そして三年前、「ドーリィナイトメア」が解散した直接の原因だ。
亜純達のグループは、メジャーデビューまで秒読みだと囁かれていた。当時の職場はバンド活動にも理解が深く、宣伝に協力したりもしてくれていた。安月給でも全く問題ないほどバンドは軌道に乗っていて、その頃に出逢った明咲が亜純の本業に気付かなかったのが不思議なくらい、契約している音楽配信サイトもあった。
そうした最中、メンバーの一人が、幼馴染にプロポーズを受けた。深夜のドライブ、ひとけのない山頂で、夜景を眺めていた時に、指輪を隠した百本の薔薇を贈られたという。その一部終始の惚気話を無邪気に披露した彼女は、翌週、妊娠が発覚してバンドを脱けた。
後輩を奪った男、亜純の生きる意味を奪った男。…………
彼らへの殺意も本物だったが、亜純が傷心に鞭打って転職を決めた先の会社にも、疫病神のような男がいた。それが、例の上司だ。

