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ママ活
第3章 快楽かお手当かママか──case.3亜純──


 二年前。

 つまり「ドーリィナイトメア」が解散した翌年の夏、亜純は上司に連れられて、あるホテルの宴会場を訪った。
 見るからに大層な役職に就いているのだろう企業人達が多くを占める一方で、かの大手企業主宰のパーティーは、容姿に優れた、ひと目でどこかしらの業界に属していると分かる、若者達が目を惹いた。彼らの中の数人は、亜純もどこかで見たことがあった。



「おい、パーティーだぞ。誰が、こんなしけた格好で来るヤツがいる?TPO、分かるよなぁ?」


 きらびやかな宴会場で、上司は亜純の頭の天辺からつま先まで、無遠慮に見回していた。無難なシャツにグレーのジャケット、黒より明るい縦縞のロングパンツ──…亜純のこの格好が、上司は気に食わないらしい。タクシーでの道中も、延々と彼は亜純に小言を聞かせていた。

 かくいう上司も、特に気取った身なりをしていない。周りを見ても、一部の招待客を除いては、ほとんど形式張っていない。


「大体な、髪くらい女らしくしろ。例えば、よく分からん、ああいうのあるだろう」


 上司が視線で示したのは、白いドレス姿の女だ。太ももにまでスリットが入ったドレスは、彼女の磨いた真珠のごとく肩を丸出しにして、螺旋に巻いた黒髪は、高い位置に結って花が挿してある。
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