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ママ活
第3章 快楽かお手当かママか──case.3亜純──


「会議を抜けて、美容院へ行けば良かったんですか」

「会議の話はしていない。午前の仕事だ、もっと効率を考えられなかったのか?ったく、これだから顔採用の女は……」

「◯◯さんは、朝から同じ格好をされているようですが」

「男は、めかしこまなくて問題ない。だいたいお前、スキルなし経験なしで雇ってくれる会社なんか、普通ないぞ?最低限の常識くらい、ちゃんとしろや。え?」


 旧時代の化石の態度を覆さない上司は、実際、それくらいの齢は重ねている。だからと言って、亜純には、彼の非難にしおらしく耐えていられる忍耐はない。引き受けるべき残業と、辞退すべきそれ。今後は選別しようと心に決めた。


「峰積、◯◯コーポレーションは知っているな?」

「はい、電気製品の……」

「あすこの◯◯さんがいらっしゃってる。もうじき顔を合わせるから、失礼のないよう、お前も丁寧に挨拶しろ」

「分かりました」


 聞けば、件の企業は今後取引する可能性があるらしく、今日ここに顔を出しているという重役は、亜純の元いたバンドに傾倒していたらしい。この商談がまとまれば、著しい利益に繋がる。無論、彼は話を進めた張本人として企画に加わり、自身の評価を上げるつもりだ。

 ややあって、噂が本当であれば亜純もどこかで会っているはずの人物が、歓談の輪から抜け出してきた。
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