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ママ活
第1章 社長が昔のママだった──case1.明咲──
* * * * * * *
明咲は、宮田に雇われることになった。
契約書類にサインして、彼と近くのホテルに場所を移した。
盛り場は、ねっとりとした何かが蛇のように明咲の全身を舐め回す感覚がした。いかがわしい欲望を抱えた大人達の行き来する路地を、制服姿で初対面の男と並んで歩く脅迫観念、しかも向かっていた先が、成人しても一定数は近付きもしないまま生涯を終えるだろう類のホテルだという後ろ暗さが、十七歳の少女を威圧したに違いない。
チェックインまで、宮田は慣れたものだった。外観に引き替え凡庸なエレベーターに乗っている途中、彼は誰かに電話していた。
宮殿を彷彿とする寝台が大部分を占めた部屋は、五月蝿いほど鮮やかな照明が彩色していた。宮田は勝手知ったる様子で中へ進むと、やはり勝手知ったる様子で、浴室らしい方へ足を向けた。
「来て」
「お先にどうぞ」
「一緒にシャワーするんだよ」
「……っ?!!」
デートクラブで女と関係を持つような客は、当然、恋人同士さながらのムードを求める。シャワーまで同伴したがる男も一定数いて、対して明咲は、恋人がいたこともセックスの経験もない。彼らを喜ばせるための極意は学んでおくべきだ、という宮田の理屈は正しい。
「タオル巻きますから。あと、三十センチ以上は距離をとって下さい」
「君さぁ、やる気あるの?」
「…………」
明咲の手首をひょいと掴んだ宮田は、大きな目を細めていた。愉快なものを見るような、卑劣な笑顔。とは言え彼の人相は、どうしても彼を悪人に見せない。