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ママ活
第3章 快楽かお手当かママか──case.3亜純──


 明咲だけが、今の亜純の安らぎだ。彼女を乱している時だけは、余計な思考も入ってこない。

 マッチングアプリで出逢った大学生は、掘り出し物だった。潔いほどエロティックで、従順。しかも美しい。彼女が「ドーリィナイトメア」を知らなかったのは、おそらく、それだけ親に、十代の大半を棒に振らされたということだ。自由になって始めての遊び相手が亜純だったという彼女は、まるですり込みの習性を備える雛だ。


 明咲に会いたい。

 男達の傲慢に穢された耳を、魂ごと彼女に清められたい。…………



 実際的な問題として、明咲の都合がつくか以前に、亜純の気持ちは帰路に先急いでいた。

 上司に倣って羽目を外す選択肢もあるが、ここで夜の相手を吟味すれば、亜純は意図せず、時間外労働の恩恵を受けてしまう。つまり僅かにでもパーティーを楽しめば、上司が絶対悪でなくなるのである。


「失礼──…」


 正面出入り口の方角へ足先を向けた時、亜純は自分の喉を疑った。

 前方の婦人に衝突しそうになって、詫びるために息を吸った。だが一言を発したのは、亜純とは別の人物の声だ。


「え?」


 亜純は、婦人にぶつかりもしなかった。彼女は第三者になど気付きもしないで、遠ざかっていく。


 そして亜純は、何者かに腕を掴まれていた。
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