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ママ活
第3章 快楽かお手当かママか──case.3亜純──

快楽は人を裏切らない。
感情や人間同士の繋がりは、極薄のガラスと同じくらい儚い。それに引き替え、快楽が亜純を落胆させたことはなかった。
佐和子と深夜のテンションに身も心も委ねた翌朝、化粧を始めた亜純に近付いてきた彼女が、連絡先を訊いてきた。
「素人の人間は守備範囲じゃなかったんじゃ?」
アイカラーを目蓋に置きながら、亜純は、スマートフォンの画面にLINEのQRコードを表示させた。それを読み取る佐和子を横目に、昨夜、彼女が披露した武勇伝を思い起こす。
彼女にとって、亜純とのセックスは異例だ。後腐れなど不本意のはずだ。
「私をママにするつもりはない?」
佐和子は、まるで天気の話でもしている調子だった。
「つまり、亜純さんの時間をお金で買えれば……という商談よ。愛人よりママの方が、今風でしょ?」
躊躇も悪びれもしないで続けた佐和子は、平日の朝に、身支度ものんびり進めている。これが経営者の余裕だろうか。
そう言えば、彼女は昔、素人の男をママ活という名目で買っていたという。
「お金は人を裏切らないわ」
佐和子は、こうも続けた。
昨夜のセックスは気に入った。SMクラブでも、昨夜に匹敵する快楽が得られるか分からない。つまり亜純が気に入った。だが、いわゆるセフレの関係は、性分に合わない。だから金銭的取引をしたい、というのが彼女の言い分だ。

