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ママ活
第4章 愛しのお姉様と姫とママ

「トリートメント、いつものと違う?」
土曜日の午後、百貨店のコスメ売り場を歩いていた時、にわかに亜純が、明咲の螺旋を描いた髪を指に掬った。
ゴールデンウィークも間近の街は、混雑している。そのため今も肩が触れ合うくらいには密着して歩いていた分、髪質の変化は観察しやすかったのかも知れない。
「やっぱり手触りも違う。明咲の薔薇じゃないと思ったら、変わったの香りだけじゃないんだ」
「香りで分かったんだ?期間限定のスパイシーフローラル。流すタイプなんだけど、そんなに残ってるかなぁ」
「明咲は、元々良い香りするからね。あたしの鼻が、センサー働くのかも」
「それって、下手な香水つけられないじゃん」
目当ての売り場に到着して、明咲は整理番号を受け取った。
予約受付中のポップの貼られたショーケースには、JILL STUARTの夏の限定商品が並んでいる。比較的どの季節もカラフルで明るいカラー展開が目立つここは、ピンクや黄色、青、緑など、次に出る品々も、まるでキャンディの色彩だ。このアイカラーは似合うに違いないだの、たまにはカラーマスカラを使ってみればどうかだの、サンプルと明咲を交互に見て所感を述べる亜純と話して待つ内に、整理番号の順が来た。
現物を確かめなくても暗唱出来る定番アイテム。補充が必要になったそれらを伝えて、店員が梱包のために奥へ向かうと、ふと、同僚の顔が明咲の脳裏を掠めた。

