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ふたりの娘
第4章 裸の父娘
「おとうさん、あれ船かな?!」
結衣子が私に振り返り、手を挙げて海に見える光を差しました。その姿は部屋の間接照明に照らされ、無邪気な中身を持つ美しい女性の姿になっていました。
「ユイちゃん、綺麗になったね…」
私はつい、結衣子に本音を漏らしてしまいました。結衣子は一瞬びっくりした顔でしたが、すぐにいつもの人懐こい笑顔に変わりました。
「お父さんがずっと、大事にしてくれたからだよ…」
私はその言葉に、結衣子と出会った5年前を思い出しました。あれは都心のホテル、妻と結婚が決まったあとの結衣子と親戚を交えた食事会の時でした。
それまでも何度か会い、結衣子は私にそれなりに馴染んでいました。しかしお母さんのお友達のオジさんだった私が、正式にお義父さんになることを伝えなければなりません。事前に母親から伝えられていましたが、当日の結衣子はいつもよりずっと緊張していました。
『今日からよろしくね、ユイちゃん』
『うん…』
結衣子はそのとき、一言だけ口に出すと下を向いてしまいました。私はしゃがみ込み目線を合わせました。
『ユイちゃんを絶対大事にするよ』
そう言って私は結衣子に、隠し持ったぬいぐるみをプレゼントしました。それは妻に事前に聞いていた、結衣子の欲しかったテディベアでした。その瞬間、結衣子の顔がパッと明るくなったことを、私は鮮明に憶えています。
酔った頭で思い出に浸っていると、いつの間にか結衣子が私の手にスマホを持たせていました。そしてまたバルコニーの手すりの前に立つと、私に声をかけました。
「お父さん、写真とって!」
私はスマホの意味をやっと理解すると、寝椅子から立ち上がりました。スマホはもう、結衣子がセッティングしてありました。
「星も一緒に写る?」
「星は難しいよw」
「じゃあユイだけを綺麗に撮って!」
私は結衣子の言葉に素直に頷いていました。そして私がスマホを向けると、結衣子はポーズを取りました。