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ある女課長のクリスマスイブ…
第1章 クリスマスイブは日曜日…
 9

「じゃあ、また明日ね、ご馳走さま」
 わたしはレストランを出て、新宿駅西口前で祐輔くんにそう言い、別の改札口に向かおうとした。

「あ、か、課長…」
 
「え?…」
 すると、彼が突然、わたしの腕を掴んできたのだ。

 不意に腕を掴まれたから、思わずドキッとしてしまう…
 そして振り返ると、彼が見つめてきた。

「…………」

 今夜は12月23日土曜日の夜、午後11時…
 街はほぼクリスマスの雰囲気に浮かれ、駅前は沢山の人々が行き交っている。

 そしてわたしは彼、祐輔くんに腕を掴まれ、見つめられ…

 彼の気持ち、想いは十分に分かるし、伝わってもいた…

 だが、しかし、わたしと彼は、上司と部下であり…

 一回り以上に歳が離れ…

 ましてや、この、今夜のシチュエーションは、彼の仕事のミスによる休日出勤をしての、ただの食事であり…

 デート、逢瀬とは違うのだ。

 ましてや、何の関係も無い…

 だけども…

 この深夜の…

 クリスマス真っ盛りの…

 浮かれた街の、夜の喧騒が…

 わたしと彼を…

 狂わせる…


 ドキドキドキドキ…

 この昂ぶりは…

 二年ぶりだ…

 そして脳裏に、昨夜のタクシーでの彼の重ねられた手の熱さが…

 浮かんできた…


 ジングルベルの音色の流れる街の喧騒が…

 心を騒つかせ、昂ぶらせ…

 狂わせてくる…




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