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無能淫魔とサディスト男
第1章 始まりは不法侵入

※如月蓮視点
「はぁーーーーーーーーーーーーー。」
深夜11時半、新宿区にある、賑わいを見せる居酒屋のとある個室。男、如月蓮はバカでかい溜息と共に、もう何回注文したか定かではないビールジョッキを煽った。
それは今から約4時間前、彼は大学時代から交際をしてた彼女とディナーを楽しんでいた。場所は新宿駅西口から徒歩5分 で辿り着く事が可能な和食スカイダイニングである。
地上200メートルから、新宿摩天楼の夜景を一望でき、個室も数室あって高級感と落ち着いた雰囲気のあるそのお店は、記念すべき彼女の誕生日に相応しいものだった。
取り止めのない世間話が多かったが、始終和やかな雰囲気だった。雲行きが怪しくなったのは結婚の話に移ってからだ。
“....ごめんなさい。やっぱりプロポーズ無理でした。”
涙を浮かべて、申し訳なさそうに頭を下げる彼女の姿が脳裏に浮かんだ蓮はチッと舌打ちをした。
実は彼、この1週間程前に婚約指輪と共に彼女にプロポーズを申し込んでいたのだ。
だが、「ごめんなさい、突然のことで頭の整理がついていなくて。少し時間が欲しいの」という彼女の気を持たせるような返答に、かなり釈然としない気持ちはあったものの、結婚という人生の一大イベントなのだから仕方がない、と彼女の気持ちを尊重し、心を大きく揺さぶれながら首を長くして待ち続けた結果、この返答だ。
「だったら最初から断りやがれ!期待させてんじゃねえよ!この自己中女が!」
すぐさま彼の怒号が室内に鳴り響いた。
個室とはいえ、きらめく夜景と厳選素材の美食を堪能出来るロマンチックな店内には間違いなく場違いなものだった。
やがて彼女の啜り泣きが激しい嗚咽に変わると、食事代と思われるお金をテーブルに置く。その様子に慌てて彼女に声を掛けて謝罪をするが、当然聞き入れられる事はなく逃げるように彼女は去っていった。
まだ誕生日用のケーキも来ていないというのに。
一人残された蓮はその後運ばれてきたアニバーサリーケーキには一切手を付ける事はなく、全く味のしなくなったメインディッシュ、岩中豚のグリルだけを平らげると、会計を済ませて店を後にした。
そして自宅付近の行き慣れた居酒屋へ電車で移動し、ヤケ酒に逃げて気付けば深夜11時半を迎えていた...という事だった。

