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無能淫魔とサディスト男
第5章 淫らなおねだりと物騒な約束事



「お前さ、今日良い匂いするな。香水か何か付けてるのか?」


焦燥感にも似た感情に支配されながら段々食事が任務のように感じ始めたロゼッタは、蓮からそう問い掛けられて、一瞬咽そうになった。


「い、え...何も。あの、どんな匂いですか?」


「柑橘系。甘いオレンジみたいな爽やかな香りだよ。なんだ、香水じゃなかったのか。お前の体臭か?」


「え、ええ。恐らく。不快でしたか?」


「いや落ち着いてて良いと思うが....サキュバスってのは香水付けてなくても良い匂いするんだな。なんか理由でもあるのか?」


「ま、まあ....元々美貌で堕落を誘う悪魔ですので、体質的にそういった事もあるのかと....。」


ロゼッタは嘘は言ってない。
嘘は言ってないが、今回の原因はそれでは無い。本当の要因は「魔力が枯渇しそうだ」というSOSが自然に身体から放たれている為に発生してしまう生理的現象の1つだからだ。初期は柑橘系の香り、末期になるとバニラとアーモンドがメインのオリエンタルのような香りへと移り変わる。しかもSOSなので、匂いは不特定多数の異性に放たれてしまっている。

まさかそんな事を蓮に言えるはずも無くて、ロゼッタは言葉を濁したのだ。

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