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無能淫魔とサディスト男
第5章 淫らなおねだりと物騒な約束事



「逃げてんじゃねえよ。」


ロゼッタは壁に身体を押し付けられた。強く打ち付けられたと言った方が適切なのかもしれない。背中全体に走る痛みにロゼッタは顔を顰めた。


「俺に黙って外に出ようとしていたのか?」


「い、いいえ。」


やっと口から出たロゼッタの言葉は、か細く今にも消えてしまいそうだ。


「じゃあ何を?」


「え、あ、こ、ここで寝ようかなって。」


「何で?」


「えっと、あの、ご、ごめんなさい。」


「誰が謝れって?俺は理由を話せと言ったんだが?」


「す、すみません、えっと、理由はですね、え、えっと....。」


困り果てたロゼッタが黙りこくってしまうと、蓮が自嘲するような笑みを浮かべた。


「.........あぁ、俺と一緒の空間にすら居たくないって?なるほど、そういう事か。そりゃあ言いづらくなるもんなぁ?」


「!!ち、違います!」


「ほぉ...じゃあ何で?」


「えっと....あの...ご主人様のご迷惑になるような行動をしてしまうから、だから、その、ここで寝ようかと。」


ロゼッタにとっては想定外の事だった。
まさか自分の様子を見に、洗面所に蓮が戻ってくるとは思っていなかったのだ。そこへ更にあらぬ誤解が生じてしまい、彼女の脳内は大パニックだ。そして吃りながら練に返答する姿を見る限り、彼女は咄嗟に嘘が付けないタイプのようだった。


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