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人質交換を託された女
第12章 籠城戦の行方
佐伯さんは背後で私と、男の意図を読み取り、「ふぅ…」と息を吐いた。

「クリーニング屋さんから戻ってきたものが…そこにあります…」と背後にある服掛けスタンドと棚に体を向けた。

「おそらく警察は我々の要求を吞まずに、時間を稼いで突入してくるはずだ…その時はどうなるか分からないが…君たちには人質として見つかってほしいんだ…裸のままで発見され…救出されるのは嫌だろう…?」

男の口から『救出』という言葉が出てきて、佐伯さんは「えっ…」と小さな声を出して、男に振り向いた。

「彼女の分も用意できないか…?」と男は私を見つめていた。その目は穏やかで、動揺している様子はなかった。

佐伯さんは「用意できると思います…他の人の制服を着ることになりますけど…」と、クリーニング屋さんの袋に包まれている服を見つめていた。

そして彼女は男に凛と背中を向けた。
「解いてください…」と伝えた。

私は彼女の勇気に背中が凍りつく。
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