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人質交換を託された女
第12章 籠城戦の行方
佐伯さんは更衣室に立ち尽くす私の姿を見て、ロッカーを開けた。紙の手提げ袋に何かを入れ、袋を持って、スタンドと棚のところにも向かっていた。時折、私の方を見て、シャツ、スカート、ベストを選んでいるようだった。

彼女は自身の制服をスタンドから見つけ、自由になった腕にそれを抱え、私に近付いてくる。

「穿かないという訳にもいかないと思ったので…キャミとスパッツを入れて…棚のところに分けて置いています…本当は今日ジムに行く予定だったんです…」

私にそれだけを伝えると、「お手洗いに行きます…」と男に告げた。拘束から解かれた彼女はリラックスして、身軽に見えた。そして部屋の隅にある扉に向かって行った。それは私が入室時に気になっていた扉だった。

「あれは盲点だったのかもしれないな…」
佐伯さんが扉を閉めて、男が話しかけてくる。私の表情が曇っていたのかもしれない。それを悟られた気がした。
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