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人質交換を託された女
第12章 籠城戦の行方
「警察の図面に…あの扉のことは書かれていなかったか…」
そう問われた私は男に返答できなかった。
確かに捜査本部で見ていた図面に、女子更衣室の第2の扉のことは記載されていなかった。
私は上体を縄で縛られたまま、男を見つめた。そして記憶を辿って、彼の名前で呼んだ。
「田口さん…」と。
すぐに反応が出た。彼の右眉がピクリと動いた。
「その名前はしばらく使わないつもりだ…」
強い口調で返す男に、私は無口を貫いた。
田口さんとは約2年前の誘拐事件の捜査本部で会っていた。会話をしたことも思い出していた。彼は被疑者に目星をつけ、同行捜査員とある女性の尾行をしていた。それに失敗し、その翌日、誘拐された男の子が遺棄されて発見された。結局、被疑者は男の子と同級生の母親だった。田口さんは被疑者逮捕の後、その日を最後に捜査本部に姿を見せなくなった。
そう問われた私は男に返答できなかった。
確かに捜査本部で見ていた図面に、女子更衣室の第2の扉のことは記載されていなかった。
私は上体を縄で縛られたまま、男を見つめた。そして記憶を辿って、彼の名前で呼んだ。
「田口さん…」と。
すぐに反応が出た。彼の右眉がピクリと動いた。
「その名前はしばらく使わないつもりだ…」
強い口調で返す男に、私は無口を貫いた。
田口さんとは約2年前の誘拐事件の捜査本部で会っていた。会話をしたことも思い出していた。彼は被疑者に目星をつけ、同行捜査員とある女性の尾行をしていた。それに失敗し、その翌日、誘拐された男の子が遺棄されて発見された。結局、被疑者は男の子と同級生の母親だった。田口さんは被疑者逮捕の後、その日を最後に捜査本部に姿を見せなくなった。