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人質交換を託された女
第16章 侵入者
重い瞼に抗い、何とか目を開けようとする。全身に痺れが行き渡り、飛沫上になった粒子が霧雨のように肩や腕の素肌に降り注ぐ。

玄関の扉が再び開かれる音を聞き、私は「ぁぁ…」とうめき声を上げた。男の靴が玄関の床を踏みしめる音がしていた。

私の隣に、目を閉じた捜査員の体がうつ伏せになって並べられた。そして男は私のもとに近付いていた。伸ばした右腕をさらに前に出し、男から逃げようとした。だが、その右手は手袋をはめた男に掴まれ、左手も腰のあたりから同様に、お尻の上で重ねられ、布か何かでしっかりと縛られてしまう。痺れた体では成す術がなかった。

ビリビリ…という音に記憶が鮮明に呼び起こされる。それは粘着テープの音だった。テープが口元に近付き、私はされるがまま口元をテープで塞がれてしまう。
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