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人質交換を託された女
第5章 積み上げれた賭け金
リーダーの男が電話に話しかける。
「私だ…そちらの進捗状況を教えて頂こう…我々の要求に応えてくれるのか…」
男はすぐに煙草に火をつけた。苛立ちが読み取れ、煙草で精神の制御をしようとしている証だった。

ロープが机に置かれた。悲壮感でいっぱいになり、視界がぼやける。曲がりくねったロープは無造作に積み上げられたカジノのチップに見えた。それのせいで私からは電話機が見えなくなった。

「ぁっ…」と小さな声が漏れ、両腕が強引に、後ろに回される。背中のところで肘が曲げられ、腕がしっかりと折りたたまれ、私の体が男たちに操られる。再び力でねじ伏せられ、目を閉じて、希望をも奪われ、絶望をもたらす、男たちの歪んだ価値観に縛られるのを待つだけだった。

それは彼らとの裏交渉に着くための、最低条件なのかもしれない。まず最初の条件として、彼らの価値観に縛られた、無抵抗の捜査員が必要だったのだ。捜査員を人質として交渉の『切り札』とする。女としての共感能力や説得能力などの素養が、利害のすり合わせに利用されてしまう。肉体の束縛の行く末は、されるがままの絶望だった。
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