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人質交換を託された女
第6章 A Lucky Winner
彼女の手が口元に向かうと、リーダーの男が「自分で外していい…」と粘着テープを自ら剥がす許可を出す。佐伯さんは躊躇(ちゅうちょ)なくテープを外し、椅子から立ち上がり、大きく深呼吸をしていた。そしてリーダーの男を見つめた。
「まずは君が行ってきていい…」と彼女に指示し、目で後を追うよう、別の男に合図する。
行員の女性たちも拘束される際、靴を奪われていた。だからストッキングを穿いただけの足で向かった。
他の行員たちは佐伯さんの歩みをじっと見つめていた。彼女が本当に帰ってくるのか心配だったはずだ。
私はここに来る前、この建物の見取り図に目を通していた。その見取り図を思い出していた。お手洗は私が最初に進んだ廊下に社員用トイレがあった。そこまではそう時間は掛からないはず、と脳内で考え、行員たちと目を合わせ、小さく頷いて見せた。彼女たちの数人はほっと息をついていた。
「まずは君が行ってきていい…」と彼女に指示し、目で後を追うよう、別の男に合図する。
行員の女性たちも拘束される際、靴を奪われていた。だからストッキングを穿いただけの足で向かった。
他の行員たちは佐伯さんの歩みをじっと見つめていた。彼女が本当に帰ってくるのか心配だったはずだ。
私はここに来る前、この建物の見取り図に目を通していた。その見取り図を思い出していた。お手洗は私が最初に進んだ廊下に社員用トイレがあった。そこまではそう時間は掛からないはず、と脳内で考え、行員たちと目を合わせ、小さく頷いて見せた。彼女たちの数人はほっと息をついていた。