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「本日も撮影日和」 微熟妻・美咲
第4章 美咲の告白「4月下旬・Portrait」
「これからは、表情のイメージをドンドン伝えるから、女優さんになったつもりで演じてみて」

と、私に伝える雫石忍さん。女優さんになったつもりって。。。難しそうって思いました。

「そこに座って、遠くを見る視線で、その視線の先に、旦那さんがいるという感じで」

と、私に伝える雫石忍さん。実際に、私が座った正面、離れたところを歩いている男性。旦那には似ても似つかない中高年の男性。でも、そう、仮想して、見ると、

「そう。いい感じよ」

と、言う声とともに、ピピピー、パシャッという音。

「じゃあ、つぎは、そこで向こうから旦那さんが歩いてきて、それを迎える感じの笑顔で」

と、伝える雫石忍さん。誰もいない虚空を見つめながら、そこに旦那がいるという仮定で、笑顔を浮かべる私。

「そ、そう、その感じ」

と、言う声とともに、ピピピー、パシャッという音。

「つぎは、この坂道を旦那さんと一緒に登るという感じで、靴紐が解けた旦那さんが遅れて、『待って』と言われた感じで振り返って」

と、伝える雫石忍さん。歩きながら、旦那の『待って』が聞こえたという感じで「え?」という感じで振り返る私。ピピピー、パシャッという音。

「いいわね。すごい雰囲気出ているわ。美咲ちゃん、女優さんになったら。こんなに初めてでうまくできる人はいないわよ。もしかして、演劇とか、経験あるの?」

と、訊く雫石忍さん。私が首を振ると、

「そうなの。あまりにも上手いから、もしかしてって思ってしまったわ」

と、微笑む雫石忍さん。

「じゃあ、次は、そのシーソーに座って、反対側に旦那さんが座っていて、シーソーで戯れている感じで、旦那さんと睦み合うという感じで」

と、伝える雫石忍さん。

「そうね。それよ。いい表情!」

と、言う声とともに、ピピピー、パシャッという音。

「次は、その散りかけた桜の下で、舞い落ちる桜の花びらに戯れる感じで、ターンしてみて」

と、伝える雫石忍さん。私が歩いて行って、実際に風に舞う桜の花びらに手を伸ばしながらターンすると、ピピピー、パシャッという音。

「そのまま、舞い落ちる花びらを見上げて」

と、伝える雫石忍さん。私が見上げて、落ちてくる花びらを見つめると、ピピピー、パシャッという音。

「いいわ!素敵よ」

と、叫ぶ雫石忍さん。
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