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霧中の夢
第1章 霧中の夢
僕は、由美が何を考えているのか分かっていた。
そう、あれは2年前の春先の出来事だった。
僕と結婚して2年目の26歳の時のことだ。
いつもと変わらない朝だった。
由美が朝仕事にゆく僕を送り出してくれる。
「いってらっしゃい。気を付けてね…」
「うん、分かってる。気を付けるよ…」
僕らは軽くハグをした。
それは、毎朝の変わりない光景だった。
僕は片手を軽く降りマンションの扉を後ろ手に閉めた。
扉はパタンと言う音を鳴らして閉まった。
僕の仕事は営業だった。
社用車を使い、今朝は直接客先に向かう事になっていた。
僕は運転して首都高に車を走らせた。
朝の首都高は過密だった。
僕の車の後ろには大型トラックがピタリと付いているのが分かった。
緩やかなカーブを曲がった時だった。
僕は車の後部から激しい衝撃を受けた。
思い切り、大型トラックに後ろからぶつけられたのだ。
瞬時にエアバッグが開く。
だが、僕の身体はエアバッグ1枚の力では支えきれず、胸を激しく強打し瞬時に肺と心臓を圧迫した。
僕にはその後の記憶がなかった。
気が付くと、上空からその事故現場を見下ろしていたのだ。