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霧中の夢
第1章 霧中の夢

どうやら、僕の車を含む3台と大型トラックの多重事故の様だった。
僕が乗っていた乗用車は呆気なく押し潰されていた。

レスキュー隊や救急車や警察の車が大勢事故現場に集まってくる。
僕は、その光景を空から見ていたのだ。

僕の身体はレスキュー隊の人の手で救い出された。
そして、救急車両に載せられて病院へと運ばれていった。

僕は即死状態だったらしい。
身体は病院の霊安室へと運ばれた。

そこに、青い顔をした由美が僕の会社の同僚の山下と一緒にやってきた。
僕の遺体は少し黒く焼け焦げ、消火剤の匂いと焦げ臭い匂いとが入り混じっていた。

ショックの余り、僕の遺体の確認を由美はすることができなかった。
確認をしてくれたのは同僚の山下だった。

僕の身に着けている腕時計で山下は確認出来た様だった。
その腕時計は由美が僕の誕生日に贈ってくれた物だ。

由美は検死に当たった医師に涙ながらにこう聞いていた。

「夫、優一は苦しんで死んだのでしょうか?」

すると検死に当たった医師はこう答えた。

「いえ、多分、一瞬の出来事で旦那さんは即死状態だったと思います…」

それを聞いた由美は苦しまずに死ねたのならそれはそれで良かったと思っていた様だった。
事実、僕は一瞬にしてこの世を去ったのだ。

苦しむ暇などなかった。
大型トラックの運転手は、まだ20代半ばの若者だったらしく3日間で仮眠を少し取っただけの状態で大阪と東京を往復していたらしい。

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