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第1章 第一楽章　アンダンテ

今度の日曜日から、ぼくと彼女はスキーに行く計画を、一月くらい前から立てていた。ご主人がその日曜日から二週間ほどアメリカに出張するのだ。
「雄一郎・・・そういうふうにしてくれる？」
あやさんは上目遣いにぼくを見てそう言うと、いたずらっぽくほほえむ。
（本気で言っているのかな？）
「どういうふうに・・・？」
「うふふ・・・」
バッハの「平均律」をBGMにしながら窓の外に視線を移した彼女の横顔は、妖しい美しさをたたえていた。

その日からぼくはスキー旅行に備えて準備をはじめた。
さまざまな用意をし、いろいろなシナリオを考えた。そして考えるたびに、自分で欲望を処理する誘惑に耐えた。