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私立桐邦音楽大学附属中学校
第19章 小山田梨果の住む町①
学園生男子の羨望の眼差しを受けながら小山田梨果を隣に侍らせ彼女の地元へ向かう。

(この優越感は役得なんだよなぁ……でも……)


「あらかじめ言っておくけど私の地元田舎だからね。」

「いいじゃん田舎。俺は好きだけどな。」

(小山田が生まれ育った町、それだけで素敵な所だよ。)

「外から見るとよく見えるんだよ。でも実状は完全に村社会だよ?」

「村社会?」

「そ、町全体が腐れ縁みたいなねー」

「???」

小山田の地元駅に着く。ターミナル駅でもなく乗り換えもないシンプルな上下二番線形式だ。

「いいねーこの感じ。103系とかが似合いそう。」

「ひゃくさんけい??」

「や、なんでもない……」

橋上改札を出ると正面に小さな本屋があった。そして南口と北口の二択。

「私の町は北口ね。」

小山田に付いて歩く。

「結構ウチの生徒もいるんだね。」

チラホラと同じ制服の生徒がいた。

「室賀くん、お腹空かない?」

体育もあった日の夕方、確かに空腹感があった。

「そういや空いたね。」

「付いてきて!」

「え、ああ。」

プリーツのスカートが揺れ小さなローファーでトコトコと階段を降りる小山田梨果。

(心底可愛い……)

駅前の小さなロータリーに出た。いかにも地方の雰囲気が漂う。

(小山田が生まれ育った町……)

深呼吸をした。
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