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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第12章 指切り将軍
──…そんなところも、昔のままだ。
「……貴方は?」
「騎兵師団の将官(バシュ)、ジフリル・バヤジットだ」
「──…」
自ら聞いておきながら、シアンはこの男を よく 知っていた。顔をひと目見た瞬間、すぐに気が付いた。
ジフリル・バヤジット・バシュ……。
またの呼び名を《指切り将軍》。
もとは廃れた男爵家の生まれで、若くしてその当主となったバヤジットも近衛隊のいち兵士にすぎなかったのだが……
ラティーク・タラン・ウル ヴェジールの後ろ盾により将官に抜擢されたと噂に聞く。
異例な事だが、昇級の理由は明らかだった。
九年前──この男が、" ある者の指 " を国王に献上したからである。
「ここは貴方の自邸ですか?」
「そうだ、俺がお前たちを宿舎からここへ運んだ。…あのまま放置はできんだろう。荷物もここに運ばせておいた」
「つまり貴方が僕たちを助けてくださったと」
「偶然だがな」
「それは…なんと礼を申し上げればいいものか。この御恩にむくいるべく、僕は貴方の下僕となります…──バヤジット・バシュ……」
下着姿のシアンはそう言ってベッドから降りると、バヤジットの足元に跪いた。
その足に口付けをしようと頭を垂れる──すると、男は急いで足を引いた。
「…っ…やめろ!お前が俺にかしづく必要はない!」
「?」
「そうやって相手に媚びを売るのはやめるんだ。不愉快だ」
「……はぁ」
まるでシアンから逃げるように椅子から立ち上がると、彼の横をすり抜けて壁際に行ってしまった。
シアンのような美しい青年に跪かれて、気分を害する者は珍しい。
まさか照れている訳でも無さそうだが
「そのような格好で寝台から出てくるな…っ。代えの服は用意してある、まずこれを着ろ!」
……いや、照れているのか、あれは。