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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第12章 指切り将軍

「議会の動向はわかったのか?」
廊下に出たバヤジットが部下へ尋ねる。
「やはり議会はタラン侍従長の独壇場ですね。帝国との対立も奴が仕組んだに違いありません」
「では国境の隊はそのまま待機か」
「そのようです。それと…気になる事があり」
「なんだ?」
大股で進むバヤジットの後ろを歩くその部下は、騎兵師団の信頼できる仲間だった。
「帝国との国交が凍結した影響で、税を払えなくなった平民が大勢おります。タラン侍従長は彼等を民兵として徴用しているのですが……その人数が尋常ではない。駐屯地のあるウッダ村は人があふれ酷い有り様です」
「民兵か…。武器の扱いを知らぬ者が数だけ増えても指揮の取りようがない。奴はどういうつもりだ?」
「おそらくは民の不満を抑えるための演出でしょうが、もし、別に思惑があるとすれば……」
「──…」
部下の報告を聞きながら、バヤジットの表情が徐々に深刻になっていく。
「俺は此方へ残る。国境の隊の指揮はしばらくお前にまかせる」
「私はそれで構いませんが、…宜しいのですか?」
「ああお前なら信頼できる。俺はタラン侍従長の調査をし、奴の企みを暴かねばならない」
「いえ──私が言いたいのは、つまり、勝手な動きをしてバシュが侍従長に目を付けられないかを危惧しております。貴方の立場上、侍従長との対立は回避すべきでは…?」
「……」
「…や、いえ、余計な事を申しました」
「確かに今の俺の地位は奴が用意したものだが、だからと言って奴の犬になる気は無い。我ら近衛兵は陛下と国をお守りするため相手が誰であろうと戦うだけだろう?」
「その通りですね。さすがです、バヤジット・バシュ」
邸の外に出た二人は互いに目を合わせてそこで別れた。
バヤジットは歩きながら衣服を整え、王宮へと向かって行った。

