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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第13章 白い花
少し身体を起こして横を見れば、顔だけ振り向いたシアンと目が合う。
「君にもあるかい?」
「オレに……目的……?」
シアンの問いは、難題だ。
この国のいったいどれだけの人間が答えられるのだろうか。
目的。自らが生きている意味。
何のために生きて、働き、決められた時に寝て起きて、物を喰い、他人を騙し、笑いかけ……死ぬ時すら選べず与えられた一生をさ迷っているのだろう。
嬉しい事が起こればいいのか。楽しいと思える瞬間があれば、その一生に価値があるのか。
愛しい者さえいれば報われるのか。
死ぬほうが簡単なのに。いつまで続くかわからない生よりも、一度きりの死を選んだほうがずっとラクなのに。
望まれてすらいない。
" 僕 " が生き続ける事なんて、誰ひとり望んではいないのに……。
「オレっ…目的とか意味、とか、わかんない。
でも──…夢ならあるよ?」
「……ん?なに?」
「夢。いつか叶えたい夢」
「…っ」
オメルは寝台の上から、床に置かれた二人の荷に手を伸ばした。
自分のぶんをごそごそと漁り、少ない持ち物の中からある物を取り出す。
それは古びた本であった。
キサラジャでは文字を巻物にしたためるから外の国から持ち込まれた物だろう。一度捨てられたふうなボロボロの黄表紙には、シアンも知らない言語が刻まれている。
彼はそれの真ん中のページを開いた。
「オレの宝物。特別に見せるよ」
「──…!これは」
やはりボロボロのそのページには、──…白色の花が。
干からびた白い花が、貼り付いていた。