この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第14章 面影
「クルバンにそれを問いますか?僕が何者であるかなど、気に掛ける価値も無いと思いますが」
クルバン──。上流貴族が連れてくる男娼。彼等は皆、法に守られず生まれも不明な賤人(せんにん)たち。
平民なら家名や職名を調べればすぐにその者の出自(しゅつじ)がわかるが、賤人である彼は全てが謎に包まれている。
「……お前、名は何と言った?」
「──…シアンです」
当然、返された名に聞き覚えは無かった。
バヤジットは彼を間近に見下ろし、その儚げな美貌を凝視する。
美しいのは目鼻立ちも勿論だが、知的な雰囲気のせいもあるのだろう。シアンの教養の高さがその言動からも伝わるのだ。
“ 身分の低さを感じさせない、このシアンという者……どこか気品すら…… ”
ゴクッ.......
侵しがたい気品
これではまるで──
「…………殿下」
「…?」
「…ッ…いや、気にするな」
自分でも信じられない言葉を口からすべらせたバヤジットは、慌てて顔を背けた。