この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第14章 面影
シアンを掴んでいた手も離してやる。
「…ハァ、シアン、お前の推測通りだ。俺はこの件に裏があると睨んでいる」
「何か手がかりは見つかったのですか?」
「いや…」
シアンの出自(しゅつじ)より、今は何よりタランの方が重要だ。
“ と言っても相手は公爵家、いきなり身辺調査は難しい ”
首都に戻ったばかりのバヤジットにはとにかく情報が少なかった。あるとすれば……
『 タラン侍従長は彼等を民兵として徴用しているのですが、その人数が尋常ではない。駐屯地のあるウッダ村は人があふれ酷い有り様です──… 』
“ そうか、タランが民兵を徴用していると報告があったな ”
昨日、部下に知らされたこの情報。これが唯一の手がかりか。
“ ウッダ村ならラクダの足で一刻もかからん ”
ターバンをひと巻き解いたバヤジットは、残り布で目元から下を覆い留め具に固定する。そうやって身支度をおこないつつ、練兵場の先にある馬舎へ歩いた。
「ラクダを一頭だ。用意してくれ」
馬舎では馬やラクダの世話をする平民がすでに働いており、バヤジットは彼らに命じてラクダと飲み水の用意をさせた。
「道中の乗り換えはどうしやすか?そろそろ嵐の時期ですから、街道の駅舎は空っぽですよ」
「問題ない。乗り換えは不要だ」
「それで──…後ろの方も同じでよろしいので?」
「…ッ?」
厩役の男に問われて後ろを振り返った先に、ちゃっかり後をつけてきたシアンの姿があった。